沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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34)「のだ」さんに聞こう

 数年前、とあるセミナーにて、「悩んだら、『のだ』さんに聞こう。」という話を聞いたことがある。タイトルだけ聞いたら、「野田」さんという偉い人の話なのかと思ってしまうが、実はそうではなく、次のような話だ。

 まずは、問題。
 次の( )に平仮名1文字入れて単語を完成させよ。
   →「た( )しい」

 多くの人は、「の」か「だ」を入れるはずである。完成する単語は、「楽しい」か「正しい」かである。そう、「の」を入れるか、「だ」を入れるか、ということで「のだ」さんだ。
 言うまでもなく、「楽しい」というのは「感情」の領域の問題であり、「正しい」というのは「理性」の領域の問題である。「の」を入れるか、「だ」を入れるかで、随分と言葉の意味合いは違ってくる。

 つまり、話の要点としては、「やるべきかやらざるべきか悩んだら、今からやろうとすることは『楽しい』ことなのか、あるいは『正しい』ことなのか、自分の内なる声によ~く聞いてみよう。」ということだ。
 だが、これだけ聞くと、「悩んだら、楽しさを犠牲にしてでも、とことん正しさを追求せよ。」という道徳の話のように想像されるかも知れないが、この話の主題は真逆である。

 要するに、人間としての「心のバランス」を正常に保っていくためには、多少は「正しさ」を犠牲にしてでも、自分の内なる声に従って「楽しさ」を追求する姿勢も大切である、ということなのだ。

 大凡、人間が何かをやろうとする際の「動機」となるのは、今からやろうとすることが「楽しい」と想像しているか、あるいは「正しい」と信じているか、のいずれかである。
 もちろん、正しくて楽しいことばかりが出来れば何らストレスは無いが、中には、「正しいけど楽しくないこと」も山ほどある。気乗りのしない仕事なんかは、どうしてもこのパターンに陥りがちである。

 人間というのは、「動物」と対比すれば「理性の主体」という側面が強調されるが、「機械」と対比すれば「感情の主体」という側面が強調される。
 人間は、「感情的で理性的」という複雑な生き物であり、心のバランスを保つのが実に難しいのだ。
 このことを常に自覚して、「楽しさ」と「正しさ」のバランスを意識的に保っていかないと、アッと言う間に「心のバランス」は崩壊してしまう。

 何でこんな話をするかというと、最近、身の回りで「仕事のあり方」について考えさせられる事例がいくつか発生したからだ。
 自分自身に対する忠告ということも念頭にある。

 弁護士にも様々なタイプがいるが、基本的には、みんな頭に「クソ」が付くくらい大真面目だ。だから、自分自身の「楽しさ」を犠牲にしてでも、自分が信じる「正しさ」をとことん追求しがちである。
 だが、その姿勢には大きな「落とし穴」が待ちかまえている。

 ハンドルに「遊び」が無ければ事故を起こしやすいのと同様、心にも「遊び」は大いに必要である。
 一昔前に流行った「ちょいワル……」くらいで丁度良いのだろう。

 固有名詞は出せないが、およそ弁護士らしくない型破りの弁護士の方が、イキイキと貪欲に仕事をしている感もある。

 私自身、できるだけ土日は休み、残業もしないようにしている。
 だが、仕事量は人並みにあるので、限られた時間で仕事を終えねばならないという強迫観念から、仕事モードの状態で「一休み」するのが非常に下手になってしまった。つまり、一旦、仕事モードのスイッチが入ってしまうと、休み無く仕事を一気にしてしまう癖が付いてしまったのだ。
 これは、良し悪しであり、人よりは若干仕事は速い気がするが、長時間の仕事には耐えられない体質になってしまった。毎日遅くまで残業して、土日もず~っと仕事、という人がいるが、おそらくは、上手に「休みながら」仕事をしているのだろう。私には、なかなかマネのできないことだ。

 先週は、仕事が重なってしまい、土日も自宅で仕事をせざるを得なかったので、大いに自覚できるくらいストレスがたまっていた。
 今回の3連休は、私にとっては、本当に「救い」となった。家族で1泊2日の小旅行に出かけ、お陰で、ストレスは解消できた気がする。

 休むことの大切さを改めて実感した次第だ。
 社会的に「正しい」ことでも、生物としての自分にとっては「正しい」とは言えないこともある、ということは是非とも知っておくべきだろう。

 最後に、故斎藤茂太氏(医師・作家。歌人の斎藤茂吉の長男で、作家の北杜夫の兄。)の「ストレス解消に効果的な行為」というものを紹介する。英語の「STRESS」の頭文字を利用して大変覚えやすいようになっている。医師の言葉だけに、知っておいて損はなかろう。私も、この言葉を聞いてから、意識的に旅行に行くようになった。

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