沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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240)時間の価値

ユナイテッド航空事件。

警察官が乗客を暴力で強制的に引きずり出すシーンは、
ホントにショッキングなものであった。

言うまでもなく、
オーバーブッキングは、航空会社の責任であり、
乗客に何ら責任は無い。

オーバーブッキングの場合に、
航空会社が任意に乗客を「指名」し、
その乗客に降りるよう命じること自体は、合法である。

しかし、それを暴力で実現するのは、明らかに違法だ。
これは、紛れもなく、警察官による「犯罪」である。

ユナイテッド航空の株価は暴落したらしい。
まあ、当たり前だろう。

顧客を大切にしない会社は、いずれ、必ず潰れる。

ユナイテッド航空の場合、離陸するまで、
乗客の座席は、何ら保証されていないということだね。

そんなバカな!

ユナイテッド航空は、当初、
800ドル+宿泊・交通費を「謝礼」として提示し、
自発的に降りてくれる乗客を募った。

だが、自発的に降りてくれる乗客は無く、
ついに、強硬手段に及んだというワケだ。

昨年、アメリカでは、オーバーブッキングによって、
強制的に予約を取り消された乗客が4万人もいるそうだ。

オーバーブッキングが発生する理由は簡単で、
空席を最小限にして利益を最大化したい航空会社の都合。

当然、キャンセル見込みは「多め」に計算するので、
オーバーブッキングになりやすいということなのだろう。

でも、そんな航空会社の一方的都合のために、
年間4万人もの乗客が、強制的に「搭乗拒否」されている事実。

今回、引きずり出された乗客は、医師であった。
翌日の診療を待つ患者のために、降りるのを拒んだのだ。

彼は、翌日の診療を待つ患者のために、
どうしても、その便に搭乗する必要があったのである。

彼にとっての「翌日」という時間は、到底、
「800ドル」なんていう金銭とは釣り合わなかったのだ。

乗客の「時間の価値」を、あまりにも軽視している。

ユナイテッド航空は、どんどん謝礼を引き上げて、
最後まで、自発的に降りてくれる乗客を募るべきだったねえ。

特に、鉄道でもなく、車でもなく、
敢えて、飛行機を移動手段として選択した人達というのは、
「時間をお金で買っている」人達だ。

そのような「時間に至上価値を見出している」人達から、
強引に「時間を奪う」というんだから、あまりにも酷い話だ。

究極的には、世の中の経済というのは、
すべて「時間の売買」と捉えることが出来よう。

人間が、「不老不死」であるならば、経済は成り立たない。

人間にとって、「時間が有限で貴重」だからこそ、
「時間を売って」、お金に交換し、そのお金で、
「時間を買って」、貴重な時間を楽しむのである。

時間の価値を軽視するものは、人生を満喫できない。
ましてや、経済的に成功など出来ようはずがない。

今回、ビジネスの中心にいるはずの航空会社が、
顧客の時間価値を軽視し、
顧客の人格を踏み潰した、という何ともお粗末な話。

まあ、ユナイテッド航空には、未来は無さそうだが、
我々も、こういう事態を「反面教師」にすべきだろう。

仕事や日常生活においても、
「人様の貴重な時間を奪う」ことをしてはいないか。

例えば、仕事における時間。
大雑把に言えば、労働者は、給与の2倍を稼いでいる。
年収が750万円ならば、年間1500万円の稼ぎだ。
そして、年間1500時間働くならば、
その人の1時間の労働価値は「1万円」だ。

そうすると、いくら濃密な取引先とは言え、
仕事時間中に1時間もの長電話で拘束してしまったなら、
あなたは、ポケットマネーで「1万円」を補償すべきなのだ。

もちろん、あなた自身も「1時間分」の損をしているワケ。

我々、自営業者も、
年間売上高を労働時間で割ってみれば、時間価値は分かる。

年間2000万円を売り上げ、年間2000時間働くならば、
1時間の労働価値は「1万円」だ。

そう考えると、仕事中にムダな時間を費やすことなんて、
とっても出来ないよね。