沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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56)「もしドラ」の実践

 2011年がスタートした。

 今年は、ウサギ年にちなんで、私自身、そして、当事務所としても、大いなる「飛躍」を遂げたいものだ。

 さて、今年の我が家の年末年始は、何だか「冬ごもり」といった様相だ。

 娘の受験が超直前期なので、当然、家族でどこかに旅行というわけにはいかない。思えば、結婚してからというもの、年末年始は、必ずといってよいほど、どこかに家族旅行に出かけていた気がする。妻の誕生日が1月5日なので、妻の誕生日は、毎年、どこかの温泉旅館などで祝杯をあげる、というのがここ数年の我が家の定番イベントであった。まあ、女性にとっては、誕生日は「お祝い」ではないらしいが…。

 だが、今年のように、ゆっくりと家で過ごすのも悪くないものだ。

 私はといえば、娘の勉強を見てあげる時間以外は、これまで買うだけ買って、忙しくて読めなかった本を、ここぞとばかりに読みまくっている。

 その中の一冊に「もしドラ」がある。

 そう、昨年、累計200万部を突破したミリオンセラーである。正式なタイトルは、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海著、ダイヤモンド社刊)という。

 最初は、表紙のカバーからしても大した本ではないと思っていたのだが、読んでみると、実によかった!さすがは、ミリオンセラーである。

 分量としては、半日ほどで十分に読めるので、是非ともご一読をお勧めする。

 ドラッカーというのは、マネジメントの父と言われるほど偉大な経営学者・社会学者であるが、「もしドラ」は、都立高校の野球部マネージャーが、ドラッカーの「マネジメント」に感銘を受けて、その「教え」を実践しながら、野球部「改革」を果たしていくというストーリーである。

 全くチャラチャラしたところはなく、真面目に書かれた本である。ドラッカーの考え方についても学べるので、ドラッカー入門としても最適だろう。そして、小説としても泣ける要素が多分にある。

 おそらく、全ての人に対して「考えさせる」何かを与えてくれるはずだ。

 ドラッカーは、数えきれないほどの名言を残しているが、中でも、私が気に入っているものは、次のとおり。

 ★ 企業の目的は、顧客の創造である。

 ★ 顧客の創造に不可欠な2つの機能は、マーケティングとイノベーションである。

 ★ マーケティングとは、セールス(販売)を不要にすることである。

 ★ イノベーションとは、明日のために昨日を捨てることである。

 ★ 利益とは、目的ではなく条件である。

 我々の属する法曹界というのは、長らく、マーケティングやイノベーションとは無縁であった。むしろ、無縁であり続けることこそが、人権擁護や社会正義の実現に資するのだという独善的な考え方が支配的ですらあった。

 だが、法曹人口増大という回避できない現実を目の前にして、何かしら「変わらねばならない」という「危機意識」が芽生えてきている。

 しかしながら、長らく「競争原理」から隔絶されてきた我々にとって、どう変わるべきかすら分からない、というのが本音であろう。

 2005年3月21日、ドラッカーは、「ドラッカースクール」といわれる経営大学院で「最後の講義」を行った。95歳であった。

 ドラッカー最後の講義のテーマは、「NPOの経営」だったが、この講義で、ドラッカーは、「非営利であろうとなかろうと、最初に問うべきことは、『成果とは何か』である。そして、次に問うべきことは、『顧客とは誰か』である。」と教えている。我々の「迷い」に対する示唆たり得る言葉である。

 つまり、私が思うのは、我々が専門とする「法律」というのは、顧客の要求を実現する一手段(道具)に過ぎないということだ。法律という商品ありきの発想では、永遠に「顧客の求めるもの」は見えてこない気がする。

 言い方を変えれば、法律という商品を「どう売るか」(これは、単なるセールス)という発想ではなく、あらゆる顧客ニーズに対して、我々が「どう応えていくか」(マーケティング&イノベーション)という発想こそが肝要である。

 弁護士の中には、経営学やビジネス的発想自体に嫌悪感を抱く者もいる。

 経営学=金儲けの為の学問という誤った認識があるからだろう。だが、ドラッカーの言うように、利益を得て存続していかなければ、社会に貢献することすらできないのだ。

 言うまでもなく、全ての職業は、社会において何らかの「貢献」をすることが使命である。ありとあらゆる職種の違いは、単に、その貢献の仕方の違いに過ぎない。

 社会に大いに貢献するために、利益(金儲け)という前提条件をクリアーしていかねばならない、という発想の転換が必要なのである。

 法曹人口の増大というのは、我々に、「顧客のために何をすべきか」を真剣に考えさせてくれる絶好の機会となろう。

 当事務所としても、今年1年、我々が実践していくべきマーケティングとイノベーションについて真摯に研究し、地域の皆様に貢献できる在り方というものを徹底的に模索していきたいものだ。

 そう、今年の抱負は、ズバリ「もしドラ」の実践なり!