沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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228)人的資本への投資

早いもので、2016年も、もう終わり。
じっくりと振り返る間もなく、アッという間に過ぎ去った1年だった。

以下は、今年1月17日の本ブログからの抜粋。

<今、当事務所は弁護士2名、事務員2名という体制である。
 大変ありがたいことだが、たくさんの仕事を頂戴している。
 正直申し上げて、弁護士1名、事務員1名を追加雇用すべきくらいの状態。

 だが、私としては、今が踏ん張りどころで、
 むしろ、少しずつ仕事量自体をスリム化したいと考えている。>

とまあ、今年の年頭には、人を増やすのではなく、
「仕事を減らす」なんてことを宣言していたワケだが、
その決意は、見事なまでに、木っ端微塵に打ち砕かれ、
仕事がドンドン・ドンドン膨張していく1年となってしまった。

この御時世に、ホントに有り難い限りの話だが、
今の仕事量で、人を増やさずにやっていくことは、
数年先の「過労死」が現実化してしまうので、ここは素直に、
「弁護士1名・事務員1名の増員」
を決意するに至った次第だ。

今年の12月からは、優秀な事務員が1名加入し、
来年の1月からは、これまた優秀な弁護士が1名加入する。

これで、当事務所も、弁護士3名・事務員3名の体制となる。
当事務所の物理的キャパから言って、この人数が完全に限界だ。

だが、今後における、一人一人の成長速度を考えれば、
この体制ならば、間違いなく「過労死」は免れるはずだね(笑)。

ところで、話はガラッと変わるが、
司法修習制度をめぐり、とっても嬉しいニュースが飛び込んできた。

裁判官・検察官・弁護士の法曹三者になるには、
司法試験に合格後、「司法修習生」とならなくてはならない。

5年ほど前までは、月額20万円ほどの「給与」が支給されていた。
もちろん、私も給与を頂戴していた。

私は、司法修習中に結婚したのだが、
給与があったからこそ、新婚生活を乗り切れたことは事実。

司法修習生には、「修習専念義務」というものが課されている。
つまり、司法修習中はアルバイト等は禁止ということだ。

私たちの頃は、修習期間は2年間だったから、
2年間、アルバイトも禁止で、なおかつ、無給だったら、
それこそ、相当な金持ち以外は、法曹三者になれないということだ。

ところが、そんな大切な給与が、
65期司法修習生からは、完全に廃止されてしまったのである。

理由は、司法試験の合格者激増による「財政難」。

そして、給与廃止の代わりに採用されたのが「貸与制」なるもの。
月額20万円ほどを貸与してくれるのだが、
司法修習終了後、6年目から10年間で返済するという仕組み。

無利子ではあるが、どうせ返済しなければならないので、
貸与を受けている司法修習生は、できる限り節約して、
貸与されたお金を使い切らないように工夫しているようだ。

そんな中、飛び込んで来たニュースというのが、
71期司法修習生から、給与が復活するというニュース!

今、修習を開始したばかりの司法修習生は、70期。
つまり、来年採用の司法修習生から給与復活という話。

まあ、65期~70期の司法修習生に貸与したお金については、
キチンと返済させるべきなのか、一部でも免除すべきなのか、
ここは大きな議論を呼びそうだけどね。

何はともあれ、給与の復活自体は、大変喜ばしいことだ。

マスコミも含め、一部論調には、
民間事業者(弁護士)になる者に対して、
税金を投入して給与を支払う必要があるのか!
といった厳しい声もあるやに聞く。

だが、法曹三者というのは、
国家権力の一翼を担う「司法制度」を支える人達だ。

このような人達を育成する司法修習制度において、
アルバイト禁止で、なおかつ、無給で我慢しろ!
というのは、あまりに酷い話であり、
国家としての責務放棄以外の何物でもない。

国家の基本は、「人的資本」である。
人的資本への投資を怠る国家は、必ず衰退する。
今、税金を投入して人材を育成すれば、
将来、その人材が国家に能力面でも貢献し、
さらに、経済面でも、納税という形で貢献してくれるのである。

実は、合格者激増による「財政難」というのは大ウソだ。

例えば、旧司法試験で最も合格者が多かったのは、
59期・60期司法修習の頃で、約1500名だ。

当時の修習期間は1年6ヶ月なので、
6ヶ月間は、2期分の給与を支給する必要が生じる。
つまり、年間に換算すれば、
およそ2200名分の給与を負担しなければならなかったのだ。

だが、当時、そんな「財政難」などという話は全く聞かれなかった。

新司法試験になってからの合格者のピークは、
62期~67期頃で、2000名~2100名程度。
その後は減少し、今後は、1500名程度で落ち着く見込み。

つまり、給与廃止を決定した頃の年間の給与負担は、
ピーク時でも2100名だったのであるから、
過去に支給していた2200名分の負担よりも軽いのである。

まあ、端的に言えば、財務省の「司法軽視」ということなのだろう。

とにもかくにも、給与復活によって、
安心して司法修習に専念することができるというもの。

人的資本への投資。
国家でも、企業でも、家庭でも、何よりも大切な視点だ。

当事務所も、弁護士1名・事務員1名の加入により、
年間に1000万円超の負担増にはなる。

だが、そんな金額など無視できるくらい、
今回の「投資」は、当事務所にとって至上の価値を有するのだ。

さてさて、来年は「酉年」。
当事務所としても、大いに「羽ばたく」1年としたいもんだねえ。