沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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207)自己肯定感と有能感

先日、全国の自治体にネット上で「爆破予告」をしたとして自ら出頭した大学
生(20歳)が逮捕された。
犯行動機は、「ニュースになるのが楽しかったから」という身勝手なもの。

勿論、犯行内容自体には、何一つとして同情できる要素はないが、
某ワイドショーで、彼の「生い立ち」に言及しており、興味深かった。

彼は、幼少期に両親が離婚して、母子家庭で育ったものの、
その母親も高1の時に交通事故で他界。
以後、親戚の家を転々と「たらい回し」にされたのだそうだ。

私の勝手な推測になってしまうが、
おそらく、彼は「親の愛情」に飢えていたに違いない。

私も、若手弁護士時代、少年事件を多数担当した。
その経験から言えば、少年事件の対象になる非行少年達は、
ほぼ100%の確率で「親の愛情」に飢えていた。
つまり、家庭の中で、親から十分な愛情を受けていないのだ。
これは、ビックリするくらいの共通項。

まあ、中には「過保護」とも言える家庭でも非行問題は生じようが、
結局は、子が親から「愛されている」という実感を持てていないワケ。

では何故、愛情不足が非行の原因になってしまうのか。
一言で言えば、「自己肯定感」が育たないからだ。

自己肯定感というのは、「自らの価値や存在意義を肯定できる感情」のこと。

自己肯定感が育たないと、「社会の中で生きる力」が湧いてこない。
「親にも愛されない私が、社会の中で愛されるワケがない」
「どうせ、私なんかが頑張っても、成功するはずもない」
という感じで、社会との積極的な関わりを自ら遮断してしまう。

で、自分を認めない社会に対して、徐々に敵対心を抱くようになる。
「こんな社会、無茶苦茶になればいいんだ」
「どうせ、私は価値が無いんだから、人生どうなってもいい」
というワケだね。

今回の爆破予告犯である彼は、母親の遺産となった交通事故の賠償金を元手に
して、デイトレーダーとしても成功していたらしい。
一説では、年収1000万円以上、資産は5000万円以上とのこと。
システム・エンジニアになりたかったというほどITにも詳しかったようだか
ら、彼は、相当な「有能感」を持っていたに違いない。

だが、自己肯定感と有能感とは別物だ。
自己肯定感は、自分の長所も短所も含めて、自分の存在価値を肯定する感情だ
からだ。

むしろ、両者が別物であるが故に、
「こんなにも有能な俺が、社会から認められないはずがない」
「認められないのは、この社会自体がおかしいんだ」
「ならば、こんな社会、ぶっ潰してしまっても構わない」
という思考に陥ったとしても何ら不思議ではない。

マズローの欲求5段階説は、このあたりを見事に分析している。

人間の欲求は、より下位の欲求が充足された後に、初めて、より上位の欲求が
芽生えてくるという心理学説だ。

第1欲求=生理的欲求
 食べたい・眠りたいといった欲求。

第2欲求=安全・安定欲求
 安全かつ安定的に暮らしたいという欲求。

第3欲求=愛情欲求
 他人から愛されたいという欲求。

第4欲求=承認欲求
 社会から高く評価されたいという欲求。

第5欲求=自己実現欲求
 理想とする最高の自分になりたいという欲求。

こう見てみると、第3~5欲求は、
結局、自己肯定感の高まりというステップなんだよね。
「愛される自分」
「高く評価される自分」
「理想を追求する自分」
ということで、自分の主観的価値がドンドン高まっているよね。

非行少年達は、第3欲求が充足されないまま育ったが為に、
第4欲求自体が芽生えることなく、社会と敵対する行動をとってしまうのだ。

自己肯定感の強い人は、心に余裕が生まれるので、
人にも優しくなれるし、社会と調和して、人の和に溶け込んでいける。
必然的に、そのような人の回りには、ドンドン人が集まり、
ますます「社会貢献」できる人物へと成長していくというワケだ。

自己肯定感の育成は、幼少期の親の接し方がカギだとされる。

親としては、次の5つが大切なんだそうだ。

1)どんな時も「あなたの味方」だと伝える
2)小さな成功体験を積ませ、褒めてあげる
3)結果ではなく、頑張りを認めてあげる
4)子供の話を真剣に聞いてあげる
5)事あるごとに「ありがとう」と感謝の言葉を伝える

特に「ありがとう」は魔法の言葉とされる。
感謝の言葉は、子供に「貢献感」を与える最高の言葉だ。

第5欲求である自己実現欲求も、結局は、
「より大きく社会貢献できる自分になりたい!」ということ。

つまり、社会に貢献できているという実感こそが、
最高の「生きるモチベーション」なんだよね。