沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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209)軸足の置き方

ショーンK問題。
なかなかのインパクトであった。

この問題が浮上するまで、テレビでよく見るコメンテーターくらいの印象しか
なかったので、彼の経歴なんか、全く気にも留めていなかったけどね。

ショーン・マクアードル川上(別名ショーンK)。
これ自体が「芸名」で、本名は川上伸一郎。

出自についても、「ニューヨーク市でアイルランド・アメリカ系日本人の父と
日本人の母の間に生まれた」としていたが、実際は、熊本県出身の純粋な日本
人のようだ。
おまけに、顔まで整形らしい。確かに、鼻筋は不自然。

もっとも、本人は「実父がマクアードルで、養父が川上」との弁明だが。

そして、最大の問題である学歴詐称については、
「テンプル大学で学位取得」
「パリ第一大学に留学」
「ハーバード大学院でMBA取得」
というのが全て嘘で、実際は、「高卒」だったとのこと。

さらには、肝心の本業とされていた「経営コンサルタント」も嘘の可能性が高
いようだ。

「世界7カ所にコンサル会社を展開し、年商30億円」とされていたが、全く
実態がなく、渋谷のオフィスは月3万円のレンタルオフィスとのこと。

まあ、彼としては、
「華麗な経歴を引っ提げ、世界を股にかけて大活躍する、イケメン・ハーフの
勝ち組経営コンサルタント」
という虚像を演じ切りたかったんだろうね。

これが、「叶姉妹」(=本当の姉妹ではない)のごとく、「スタイル抜群のセ
レブ姉妹」という「キャラ設定」を演じているだけのタレントならば、視聴者
もテレビ局も、それを重々分かった上で楽しんでいるので、何ら問題はない。

だが、ショーンKの場合、コメンテーターとして抜擢されるにあたっては、そ
の職業や学歴が、かなり重要な「選考理由」となったであろうことは、想像に
難くない。

その意味で、今回の件は、悪質と言えよう。

勿論、「経営コンサルタント」を名乗るのは自由である。
とは言え、単なる「自称コンサルタント」に仕事を依頼する者はいない。

従って、「〇〇コンサルタント」と名乗る者には、必ず、その「裏付け」が必
要とされる。

その裏付けの定番とも言えるのが、
「資格」「学位」「職歴」
の3つだ。

そして、最も強力な裏付けが「資格」。
例えば、
経営コンサルタント=中小企業診断士
財務コンサルタント=公認会計士・税理士
法務コンサルタント=弁護士・司法書士・行政書士
知財コンサルタント=弁理士・知的財産管理技能士
金融コンサルタント=FP技能士・CFP・AFP
人事労務コンサルタント=社会保険労務士
不動産コンサルタント=不動産鑑定士・宅建取引士
建築コンサルタント=一級建築士・技術士
ITコンサルタント=情報処理技術者・技術士
といった感じ。

中小企業診断士の場合、受験資格は無い。
つまり、ショーンK氏は、1年間集中的に勉強して、中小企業診断士の資格を
取得してしまうのが、最短の「裏付け作り」だったはず。

だが、中小企業診断士の場合、そのネーミングがビミョーなんだよね。
我々のように、ズバリ中小企業を相手にするコンサルなら、ドンピシャでいい
んだけど、大企業を相手にコンサルしたい人の場合には、「中小企業」という
ネーミングが、むしろ邪魔になるようだ。

著名な経営コンサルタントである大前研一氏や堀鉱一氏だって、
もちろん、中小企業診断士ではない。
テレビで見かける経営コンサルタントで、中小企業診断士という肩書を使用し
ているのは、三橋貴明氏くらいのもんだろう。

経営コンサルタントの国家資格は、中小企業診断士しかない。
で、大企業相手の経営コンサルタントは、「学位」と「職歴」で勝負するしか
なくなるワケだ。

学位の代表格は、勿論、「MBA」(=経営学修士)である。
堀鉱一氏は、ショーンK氏が憧れた、あの「ハーバード大学院MBA」であ
り、その後の職歴も「ボストンコンサルティング」と華々しい。

大前研一氏は、MBAホルダーでもないが、職歴が「マッキンゼー・アンド・
カンパニー」と、これも華々しい。

ショーンK氏が、何故、「経営コンサルタント」に憧れたのかは不明だ。

彼は、FMラジオ局(J-WAVE)のナビゲーターとしては十分に成功して
いた。
彼の肩書が、「J-WAVEナビゲーター」ではダメだったのだろうか?

イケメンで、重低音ボイスで、人柄温厚。
これらの要素だけで、テレビ局が使いたくなったのではないか?

あの有名な「インテル、入ってる?」の声だって、彼のものだ。

彼は、自らのラジオ番組で、多数の「経営者と対談」している。
つまり、その気になれば、
「ビジネスにも造詣が深いJ-WAVEナビゲーター」
という売り出し方が可能だったのではなかろうか?

彼は、どうも「軸足の置き方」を間違えたようだ。
「テレビ・ラジオでも活躍するバリバリの経営コンサルタント」
という虚像を作ろうとしたのが大失敗なんだよね。

やはり、彼の軸足は「J-WAVEナビゲーター」であるべきだった。

これは、私自身への戒めでもある。
私は、あくまでも
「経営問題も分かる弁護士」
なのであって、決して
「法律に精通した経営コンサルタント」
ではないということ(笑)。

まあ、「身の程を知れ」ということだね。