沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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244)権力の源泉

昭和以降の総理大臣では、佐藤栄作・吉田茂に次いで、
首相在任期間3位を「爆走中」の安倍首相。

今年3月には、自民党の総裁任期が、
「連続2期6年まで」から「連続3期9年まで」に延長され、
今後も、ドンドン記録更新されていく可能性が高い。

そして、2年後の2019年8月24日を迎えれば、
佐藤栄作の在任期間2798日を抜いて、
歴代1位に躍り出る可能性すら、現実味を帯びてきた。

唯一の失脚ネタと言えば、
安倍夫妻が主演の「学園もの」シリーズか。

でも、「森友」にしろ「加計」にしろ、
結局は、流行語にもなった「忖度」政治の典型。
忖度されている側の安倍首相は、
「官僚が先回りして勝手に突っ走ったこと」
と言い張っていれば、おそらくは、逃げ切れてしまう。

本当に、今の安倍政権は、恐ろしい。
あの、先例主義で融通の利かない「官僚」たちが、
先例を無視して、率先して「忖度」するのだから。

この安倍政権の異常なまでの「権力の源泉」は何か。
ズバリ言えば、「人事」である。

2014年5月、「内閣人事局」が設置された。
これにより、各省庁の事務次官以下600名の人事権を、
首相官邸が牛耳ることとなった。

かつて、官僚の頭の中には「省益」しかなかった。
それはそれで、批判されるべき要素が多かったろうが、
それでも、今回の加計問題の例で言うならば、
内閣府の「理不尽なゴリ押し」に対しては、
文部科学省は、何が何でも屈しなかったはずである。

結局、首相官邸の「ご機嫌」を損ねてしまえば、
アッという間に「クビ」が飛び、将来が無くなると思えば、
力に屈服するしかない、ということだ。

従来、日本の政治家は、どうやっても官僚に勝てなかった。
それが今や、官僚を力で捻じ伏せてしまう安倍政権。

そして、最も恐ろしいことは、
国家権力を縛るはずの憲法ですら、完全に無視していることだ。

中国や北朝鮮の「脅威」があると言って、
戦争ができる普通の国にしようという「安保法制」。
これは、明らかに憲法9条の死文化だ。

テロの「脅威」があると言って、
国民を監視できる国にしようという「共謀罪」。
これは、明らかに憲法21条の死文化だ。

憲法21条は、表現の自由と通信の秘密を保障する。
この「通信の秘密」というのは、
通信の「内容」だけでなく、通信の「存在」自体も秘密ということ。

ところが、共謀罪(テロ等準備罪)を摘発しようと思えば、
共謀という犯罪行為が出現する適法段階で、通信を傍受する必要がある。

ということは、国民全員が国家権力の監視下に置かれかねないのだ。

安倍政権の政策実現の常套手段は、
やたらと「脅威」を訴えて、防衛のために「必要」だという論法。

しかし、国家の政策というのは、
その政策を実施する「必要性」だけでなく、
その国家の法体系上の「許容性」をも充足せねばならない。

その「許容性」を審査する拠り所が「憲法」なのである。

ヒットラーの例を出すまでもなく、
民主主義というのは、独裁政権の暴走を許容する可能性がある。

その暴走を食い止める「最後の砦」が憲法であり、
憲法こそが、少数派の人権を保障する唯一のカードなのである。

もちろん、日弁連は、共謀罪創設に猛反対している。
私も、一人の弁護士として、一人の国民として、断固反対である。

共謀罪(テロ等準備罪)について言えば、
国際組織犯罪防止条約締結のために「必要」と政府は強調するが、
国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者のニコス・パッサス氏は、
「条約はテロ防止を目的としたものではない」と明言している。
つまり、「金銭的な利益を目的とした国際組織犯罪」が対象で、
「テロは対象から除外されている」のだ。

そうなのだ。
結局、安倍政権の政策には「理屈が全く無い」のだ。
そして、理屈が無くても、「力づく」でゴリ押ししてしまう恐ろしさ。

今回の「前川の乱」は、象徴的に言えば、
力で捻じ伏せられてきた官僚としてのプライドの爆発なのだろう。

この爆発が、どうにかして、現役官僚の中にも連鎖して、
政治家と官僚とのパワーバランスが、うまく均衡して欲しいもの。

それにしても、人事というのは、恐ろしい。

私は、池井戸潤の小説が好きで、ほぼ全て読んでいるが、
彼の小説の一貫したテーマは、「人事」だ。

人事に関する男の「妬み」「嫉み」は、半端じゃないからねえ。
ま、安倍政権が終焉となった後の、官僚の反乱が見ものだね。