沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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208)育児世代に力を!

確定申告やら貯まった仕事やらで、ホントにバタバタだった。
まだまだ落ち着かないものの、久々にブログの更新をば。

ここんところ、やたらと「育児」に関する話題に触れる感じ。

・颯爽と「イクメン宣言」をしておきながら不倫に走る国会議員。
・過激だが正論過ぎる「保育園落ちた日本死ね!!!」なるブログ。
・このブログに対するお粗末な国会論議とピンぼけの酷いヤジ。
・全校集会で「女性にとって最も大切なことは子供を2人以上産むこと」と発
言した時代錯誤な公立中学校校長。

内閣府の「平成25年度男女共同参画白書」によれば、各国における、
6歳未満児のいる夫の家事・育児関連時間(1日当たり)は次のとおり。

日本=家事全体:1時間7分、育児のみ:39分
アメリカ=家事全体:2時間51分、育児のみ:1時間5分
イギリス=家事全体:2時間46分、育児のみ:1時間
フランス=家事全体:2時間30分、育児のみ:40分
ドイツ=家事全体:3時間、育児のみ:59分
スウェーデン=家事全体:3時間21分、育児のみ:1時間7分
ノルウェー=家事全体:3時間12分、育児のみ:1時間13分

案の定、日本は、夫が家事全体に費やす時間も、育児に費やす時間も、
諸外国と比べて、ダントツに最低レベルだよねえ。

近時、マスコミで話題となっている各種発言から想定されるとおり、
日本では、まだまだ「女性は家庭の中で家事・育児を担当すべきもの」という
固定観念が根強いのかも知れない。

他家に入る女性を「嫁」と呼び、
自分の妻のことを「家内」と呼び、
他人の妻のことを「奥様」と呼ぶ、なんて具合だ。

私も、たいそう偉そうなことを言っているが、このテーマに関しては、
何一つとして、まともに語れる自らの実績はないし、
とにかく妻への感謝・感謝しかない。

つまり、このテーマについては、以下、一貫して、
完全に「自分のことを棚に上げた」発言である。

私の妻は、結婚と同時に当時の職を辞し、
その後、子供達が就学年齢に達するまで、専業主婦を貫いてくれた。

お陰様で、私は、家庭内のことは全て妻に任せっきりで、
自らの仕事に没頭できた。

勿論、妻が職を辞することを私からお願いした訳ではないが、
妻が、そのことで「大切なキャリアを中断」したこと自体は疑う余地のない事
実。

その妻も、今では、当事務所の事務員の1人として、新たなキャリアを積んで
いる次第なのだが、
妻が、このキャリアの中断・変遷を不満に思っているか否かとは関係なく、
妻の多大な犠牲のもとに、私のキャリアが維持されたワケ。

つまり、「育児を片親のみで負担する」ということは、そういうことなのだ。

件の校長は、「(女性は)子育てのあと大学で学び、医師や弁護士、学校の先
生、看護師などの専門職に就けばよい」などと発言したそうだ。

そもそも、「育児=女性の仕事」と決めつけている点が論外なのだし、
育児後に大学に入り直して専門職に就くなんて、
一体全体、どんなスーパーウーマンを想定しているのだろうか?
それに、専門職のスタートラインに就く頃には、一体、何歳なんだ?
もっと言えば、それだけの能力とモチベーションがある人なら、
会社側も、キャリアの中断自体を全力で阻止するはずだよね。

安倍政権は、「1億総活躍社会」をスローガンに掲げている。

だが、この「1億総活躍担当相」の加藤大臣は、その他にも、「女性活躍担当
相」「再チャレンジ担当相」「拉致問題担当相」「国土強靱化担当相」「内閣
府特命担当相(少子化対策男女共同参画)」等々、ありとあらゆる分野をごっ
ちゃまぜに「兼務」している。
まあ、この兼務のさせ方からして、「女性活躍」を本気で推進しようという気
は全くなさそうだね。

今の政治は、「老後世代」には温かく、「育児世代」には冷たい。

何故なら、「老後世代」の声は選挙結果に直結するから。
とにかく、お年寄りの投票率はすこぶる高い。
しかも、「老後の問題」は、現役世代にとっても「明日は我が身」となる問題
なので、言ってみれば、全ての国民の重大関心事となり得る。
従って、「老後世代」は、選挙結果に直接影響するほどの大きな政治力を形成
することとなる。

一方、「育児世代」は、自分のことで日々忙しいし、比較的、政治に無関心な
人が多い。
そして、私の世帯もそうであったように、専業主婦世帯では、育児問題の深刻
さが露呈しない。
さらに言えば、育児期間は、人生の中では比較的短期間であり、老後問題のよ
うに、人生における大きな部分を占めるものではなく、その時期が過ぎ去って
しまえば「当事者意識」が無くなってしまう。
仮に、育児問題に強い不満があっても、制度が改変される頃には、自分自身の
育児期間が過ぎ去ってしまっているので、敢えて、政治的に声を上げるモチベ
ーションが湧きにくい。
従って、「育児世代」は、政治力としては非力のままにとどまる。

で、政治は、「老後世代」の顔色ばかりを見るようになるワケだ。

今の時代、専業主婦世帯を維持するには、夫の年収が700万円は必要だと言
われる。
でも、若い世代では、そんな高年収は夢のような話。
当然ながら、共稼ぎ世帯が大前提となる。

そして、キャリアを積み始めたばかりの若い世代では、
キャリアの継続こそが、何よりも重要な課題。

育児休業は、原則として、子供が1歳に達するまでの間しか取得できない。
となると、どうしても、十分なキャパの保育園が必要不可欠だ。

ところが、経営的観点から見れば、
「保育園を作るより駐車場にした方が儲かる」
と言われるほど、保育園経営というのは、効率性の悪いビジネスだ。

それに、保育士の待遇問題も改善しないとダメだが、
保育士を高給待遇にすれば、そのまま保育料に跳ね返ってしまい、
結局は、子供を預けること自体が不可能になってしまう。

つまり、この問題は、自由競争原理の下では対応不可能な課題なのだ。

今回、「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログに端を発し、
育児(保育園)の問題が、国民的議論になりつつあること自体は、大変喜ばし
いことだ。

どうしたって政治的にしか解決できない問題なのだから、何とか、このまま国
民の声がドンドン大きくなっていって、
ついには、自分の進退にしか関心のない政治家たちを動かすほどの大きな力に
なってもらいたいもんだねえ。