沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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319)ダム経営

経営の神様、松下幸之助氏の言葉である。

パナソニックのHPによれば、
次のような解説がなされている。

(引用はじめ)

「ダム経営」とは、最初から
一定の余裕をもった経営のあり方であり、
あたかもダムに入れた水を必要に応じて、
徐々に流していくように、
たとえば、需要に変動があった場合、
品物が足りなくなったり、
余り過ぎたりしないように、
余裕設備を動かしたり、休ませたりして、
安定的な経営を進めるというもの。
それは設備だけではなく、
資金、人材、在庫についても同様である。

(引用おわり)

資金の話だけに限定すれば、
預金(キャッシュ)を「ダム」と捉えて、
資金需要に対して柔軟に対応する姿勢だ。

言うなれば「キャッシュダム経営」だ。

我々のような自営業者の場合、
収入は極めて「不安定」である。

私自身も、事務所経営をしていて、
本当に、毎月の「資金繰り」に苦労する。

当事務所は、弁護士4名・事務員4名だが、
この程度の規模の法律事務所であっても、
毎月の経費は相当な金額に及んでしまう。

加えて、ほぼ毎月に渡って、
何らかの税金の納税日がやって来る。
それも結構な金額だ。
これが、本当に「たまらん」のである。

経費を支払って、納税をした後に、
ようやく、家計費に回せることとなる。

どう頑張っても、
経費・税金・家計という順番は変わらない。

経費と税金を支払った残りが家計費。
これこそが、不変のツライ現実なのだ。

支出に関しては、まあ、
経費と家計費は、特殊な事情がない限り、
ほぼ一定額なので、固定費と言ってよい。

だが、我々自営業者の最大コストにして、
経営を揺るがしかねない「変動費」こそ、
ズバリ「税金」ということになる。

毎年、毎年、税金は一定しないし、
毎月の振れ幅だって、相当な金額に及ぶ。

私自身、スマホのメモ帳に、
「納税カレンダー」を入れている。

毎月、翌月家計費+来月納税額を計算し、
「キャッシュダム」から家計費口座へ、
という手順を繰り返し続けているのだ。

何しろ、収入自体が安定しないし、
税金という変動費の振れ幅も凄い。

こうなってくると、、
この「キャッシュダム」が無いと、
途端に、資金ショートを起こして、
最悪の場合、「ジ・エンド」となる。

そうなれば、事務員も路頭に迷う。
それだけは、絶対に回避せねばならない。

経営者の最大の使命は、
「事業を潰さない」ことだからね。

お陰様で、長年の事務所経営で、
「キャッシュダム」による資金管理
が完全に身に付いたと自負している。

自営業者の場合であれば、
「月商の3~6ヶ月分」あたりが、
「キャッシュダム」に保持すべき資金
ということになろうか。

このことは、経営だけではなく、
家計管理でも極めて重要な概念である。

サラリーマンであっても、
「生活費の3~6ヶ月分」くらいを、
「生活防衛資金」として用意すべし、
というのは、よく言われるところ。

昨今、流行の「FIRE」。
多くの若者が、これに挑戦しては、
失敗したという話をよく耳にする。

おそらく、資産収入だけに依存し、
この「キャッシュダム」の構築と、
それによる資金管理を疎かにしている、
のが最大の理由であろうと想像する。

FIREの基本構想は、
「4%ルール」というものだ。

毎年、資産の4%だけ取り崩せば、
資産が枯渇しないという理屈だ。

要は、運用益>取崩額なので、
ということなのだが、
投資資産は、長期では上昇するが、
短期では極めて不安定なもの。

そうなると、
定額で取り崩すことが前提ならば、
短期で下落が続いた場合には、
アッという間に資産が枯渇してしまう。

資産収入というのは、
「安定性」(定額)を優先すれば、
「永続性」が損なわれ、
「永続性」(定率)を優先すれば、
「安定性」が損なわれるというもの。

この点は、分かりにくいかも知れない。
資産収入を得る方法としては、
インカムゲインかキャピタルゲインだ。

株式であれば、
配当金がインカムゲインだが、
これだけで生活するとなると、
相当な投資元本が必要となる。

FIREでいう「4%ルール」は、
売却によるキャピタルゲインだ。

資産を取り崩す方法としては、
「定額」と「定率」の2つがある。

定額で取り崩せば、
生活費としては安定するが、
早い時期に市場が暴落すると、
資産が枯渇するリスクが発生する。

他方、定率で取り崩せば、
理論上、最期まで資産は枯渇しないが、
市場の変動によって、
生活費が安定しないという訳だ。

多くの人は、生活費は一定にしたいから、
定額取崩しを実践するであろうが、
その場合には、市場の暴落に備えて、
絶対に「キャッシュダム」が必要なのだ。

FIREという概念を初めて紹介した
「FIRE 最強の早期リタイア術」
(クリスティー・シェン著、ダイヤモンド社刊)
という書籍においても、
「現金クッション」が大切だと強調している。

言葉は違うが「キャッシュダム」と同義だ。

何と、同著では、
「生活費の5年分を用意しろ」
と言っているのである。

FIREの4%ルールが独り歩きし、
「生活費の25年分を貯めれば勝ち!」
という短絡的な風潮が蔓延しているが、
「現金クッション」として、
生活費の5年分が必要ということなら、
「生活費の30年分を貯めないとダメ!」
というのが紛れもない現実なのである。

サラリーマンしか経験の無い人は、
「キャッシュダム」による資金管理は、
ピンと来ず、ここで躓いてしまうだろう。

ということで、近頃は、
全く働かないFIREは無理だから、
「働きながらFIRE」なんていう、
言葉自体よく分からない概念も登場した。

家計費を分解すれば、
「基礎生活費」+「ゆとり費」
ということになるだろうか。

FIREの場合、
「基礎生活費」を資産収入で賄う、
というのが根本的な発想である。

FIREには4種類があるとされ、
ざっと、以下のとおりだ。

(1)ファットFIRE

ファット=豊かなFIREということ。

「基礎生活費」も「ゆとり費」も、
全ての家計費を資産収入で賄うというもの。

本来の目指すべき完璧なFIREだ。

だが、蓄積すべき資産額は相当高額となる。

(2)リーンFIRE

リーン=無駄のないFIREということ。

「基礎生活費」だけを資産収入で賄うもの。
「ゆとり費」については、求めない!

かなりの倹約生活を強いられるし、
精神衛生上も好ましい生活は送れないはず。

もしも「現金クッション」が無ければ、
途端に破綻してしまう可能性が高いね。

昨今、「FIRE失敗!」なる動画が多いが、
ほとんどのケースが、このカテゴリーだ。

(3)サイドFIRE

副業をしながらのFIREということ。
サイドビジネスをしながら、だね。

「基礎生活費」は資産収入で賄うものの、
「ゆとり費」は副業収入で賄うスタイル。

(4)バリスタFIRE

パートで働きながらのFIREということ。
スタバのバリスタが、パート店員でも、
社会保険など福利厚生が充実している、
ということから生まれた言葉らしい。

「基礎生活費」は資産収入で賄うものの、
「ゆとり費」はパート収入で賄うスタイル。

サイドFIREとバリスタFIREは、
よく似ている発想で、
フリーランスで収入を得るか、
雇われて収入を得るか、の違いに過ぎない。

まあ、結局のところ、
本来の目指すべきファットFIREは、
とってもハードルが高いので、
何とか手が届きそうなリーンFIREに、
多くの若者が挑戦したのであろうが、
現金クッションの必要性を自覚しなかったり、
あまりにカツカツの倹約生活を強いられたり、
といったことから、
これは無理!やっぱり、少しは働こう!
ということになったのだろう。

どういう人生設計を描くかは、
完全に各人の自由なので、
他人の生き方に対してコメントする気はないが、
あまりFIREの「RE」に拘らずに、
シッカリと60歳くらいまでは働いて、
その後、悠々自適のセカンドライフを送る!
という人生目標を設定するのが、
無理のないライフプランではなかろうか。

私も、59歳でセミ・リタイヤし、
その後は、資産の取崩しも視野に入れながら、
穏やかで、豊かで、楽しいセカンドライフ!
というものを目指したいと強く思っている。

お陰様で、今のところ、計画は順調だ。
さあ、もうあと一息!
ラスト・スパートといったところだね!