沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

  • 最近の投稿

  • カテゴリー

  • 2024年5月
    « 4月    
     12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031  
  • アーカイブ

  • 法律相談
  • 顧問契約

235)自営業と小遣い

新婚ホヤホヤの後輩弁護士いわく、
「妻が小遣い制にしたいって言うんです……」と。

いやいや、それはマズイ(笑)。
奥様との上下関係うんぬんの話ではなく、
そもそも、自営業に小遣い制を導入すること自体がムチャだから。

これをムリヤリ貫こうとすると、「夫婦不仲の原因」になってしまう。
実際、ネット検索すれば、その手の話はワンサカと出てくる。

FPの目線から言えば、
家計における適正な小遣いの比率というのは、
「手取り収入の10%」だとされている。

どんなに厳しくしても、「8%」は確保すべきだし、
どんなに甘くしても、「12%」が限界だろう。

小遣いを低くし過ぎると、「夫婦不仲」の原因となり、
小遣いを高くし過ぎると、「家計破綻」の原因となるからね。

つまり、手取りが月額30万円の家庭ならば、
月額2万4000円~3万6000円が適正な小遣い。

で、お分かりのとおり、小遣いなるものは、
「手取り収入」が毎月安定している人にしか導入できないモノ。

世の中の職業というのは、大雑把には、
1)労働者(サラリーマン)
2)法人経営者(法人役員)
3)自営業者(フリーランス)
の3つに分けられる。

このうち、労働者と法人経営者は、給与なり役員報酬なり、
毎月、一定額の収入が計算でき、
社会保険も税金も源泉徴収されるから、手取りも明確だ。

ところが、自営業者の場合、毎月の収入自体が不安定。
そして、「手取り収入」に至っては、計算しようもない。
厳密には、確定申告するまでは全く分からないのだ。

自営業者の手取り収入を計算するには、
「事業所得+減価償却費-社会保険料-税金」
という算式に具体的な金額を当てはめる必要があるが、
事業所得も税金も、確定申告で初めて判明するシロモノ。

ということで、小遣いをいくらに設定すべきか決めようがないのだ。

そんな状況で、ムリヤリ小遣いだけを毎月一定額にしてしまうと、
必ず、どこかで「心の無理」が生じてしまい、
「小遣い制」そのものに対する不満がいずれ爆発してしまう。

小遣いというのは、それなりに定義すれば、
「職業費・生活費以外で、家族の誰とも共有しない雑費」
ということだろうか。

世の中には、「昼食代」や「会社の懇親会費」なんかを、
小遣いから出させている家庭もあるようだが、
昼食代=生活費、会社の懇親会費=職業費なんだから、
小遣いの定義からすると、全く「的外れ」なやり方だよねえ。
こういうのは、典型的に「夫婦不仲」に発展するパターンかも。

で、自営業の場合、どうしたって、この「職業費」が相当額に及ぶ。
自営業者の職業費というのは、要は、事業費そのものだ。
もちろん、事業費を小遣いから捻出すべきではない。

事業費としての妥当性は、自営業者本人でないと分からないので、
事業費の当否に配偶者が首を突っ込み始めると、
もはや、どうにもこうにも収拾が付かなくなる。

従って、ずっと夫婦円満でいこうと思うならば、
事業費は自営業者本人に任せ、家計費は配偶者に任せ、
後は、相互に「一切干渉しない」ことに尽きるのだ。

自営業世帯の場合は、小遣いという概念自体を捨て去って、
自営業者本人は、事業費のやりくりに専念し、
配偶者は、家計費のやりくりにのみ徹することなんだよね。

自営業者の最大の責任は、
「事業上の利益 > 家計費+税金+社会保険」
という不等式を成立させ続けることだ。

我が家でも、
事業口座は私が管理(キャッシュカード=私のみ)し、
一方、家計口座は妻が管理(キャッシュカード=妻のみ)する、
というスタイルを貫いている。

加えて、クレジットカード専用口座を設け、
クレジットカードは、私も妻も各自で所持している。

私の家庭に対する責任としては、
家計口座やクレジット口座の残高が不足したら、
「確実かつ速やかに」入金することのみ。

もちろん、事業費のやりくりに妻が口を出すことはない。

一応、我が家のマイ・ルールとしては、
家計口座の入金ライン=「2ヶ月分の生活費+翌月納税額」
クレジット口座の入金ライン=「各カードの合計利用限度額」
で、この入金ラインを下回ったら、すぐに入金するというもの。

2ヶ月分の生活費があれば、不意の出費があっても困らないし、
カードの利用限度額があれば、「借金」をしなくて済むからね。

毎月の収入自体が不透明な自営業の場合、
こういう方法でやりくりしていくより他はないと考えている。

もちろん、我が家のやり方がベストではなかろうが、
少なくとも、自営業における小遣い制というのは、
やっぱり、「ないよなあ」と言い切りたい。

破綻する自営業者の典型は「公私混同」である。
従って、まずは、事業口座と家計口座は「峻別」すべきで、
しかも、それぞれ、別の人が管理するのが最も賢明な方法だ。

まとめれば、自営業者には、次の4つの口座が必要である。

1)事業口座(売上と経費の一括管理)
2)家計口座(家計費の一括管理)
3)クレジット口座(クレジットカードの引落し専用)
4)貯蓄口座(自動積立)

こういう家庭のルールは、途中で変えるのは難しいから、
新婚のうちに、ビシッとルール化してしまわないとねえ(笑)。

おーーーーっと。
ゆっくりブログを書いている余裕などなかった。
サッサと、確定申告を済ましてしまわねば。
さてさて、昨年の我が家の「手取り収入」はいくらだったろう?