沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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201)かけこみ納税

今年も、残すところ、わずか2週間余り。
仕事納めに向けて、誰もが多忙を極めている時期だねえ。

さて、そんな師走の忙しさの中、
我が家では、ドーンと「かけこみ納税」をした。

もちろん、この時期に本来の納税はあり得ないので、
今、マスコミでも話題の「ふるさと納税」というヤツだ。

絶対にしないと損!
ということは重々分かっていたのだが、
日常の忙しさから、ついつい後回しになってしまい、
今年、ようやく「かけこみ納税」となった次第。

まあ、納税という用語は使われているが、
要は、自治体への「寄附」ということなのである。

ふるさと納税の理念は、ズバリ「地方創生」だ。

地方で生まれ育っても、高校を出てしまえば、都会に出る人が多い。
そして、そのまま、都会でバリバリ働くことになろう。
当然、都会の税収は増える一方で、地方の税収は減る一方。

そこで、都会で納める税金を何とか「ふるさと」へ回せないか、
という発想で生まれたのが、この制度だ。

都会で働いていても、自分の「ふるさと」が潤えば嬉しいし、
どうせ納税するなら、愛着のある「ふるさと」に納税したい。

だが、ただ「納税を振り替える」だけの制度なら、
手続きの面倒さというハードルを越えるのは相当に難しい。

で、ふるさと納税を受ける側が考えたのが、
納税(寄附)してくれた人に対する「御礼」作戦だ。

この「御礼」というのは、
端的に言えば、その地方の「特産品」などの贈答品だ。

例えば、A市在住の甲氏が、B市に1万円のふるさと納税をする。
ここで、B市は、甲氏に5千円相当の「御礼の品」を贈答する。

ふるさと納税は、その仕組み上、2千円だけ自己負担が生じる。
つまり、2千円だけは、納税の「振り替え」が出来ないということ。

従って、甲氏は、2千円の負担で、5千円の品物をゲットしたので、
3千円のトク。

一方、B市は、1万円の寄附を受けて、5千円の品物を贈答したので、
5千円のトク。

じゃあ、誰がソンしたのかと言えば、もちろんA市である。
A市は、1万円の本来税収が、2千円まで減ったので、
8千円のソン。

ということで、都会(A市)の税収が、
きれいに、地方(B市)へ回ったというワケなのだ。

そして、B市が贈答用に購入した「御礼の品」は、
当然に、B市の地元生産者の手によるもの。
この地元生産者も、この制度によって、たっぷり潤うことになる。

まさに、ソンをするのは都会だけで、
地方も、地方の地元生産者も、
そして、ふるさと納税をする人も、み~んなハッピーということだ。

既に、本来の税収を上回る「寄附」を受けている自治体もあるらしい。

これで、ホントに「地方創生」ということになっていけば、
本来の理念が実現されたということなのかもね。

さて、この「ふるさと納税」は、
以前から存在する「寄附金控除」という仕組みを大幅に拡大したもの。

寄附金控除というのは、「個人が公益団体等に対して寄附した場合に、寄附した金額について、所得控除や税額控除を認めること」である。

日本の場合、寄附金控除は、
所得税(国税)は、所得控除方式で、
住民税(地方税)は、税額控除方式とされている。

所得控除というのは、寄付金額=「経費」に出来るということ。
所得税率は、高額所得者ほどドンドン高くなるので、
これは、言ってみれば「富裕層優遇」という結果をもたらす。

税額控除というのは、寄付金額=「減税額」になるということ。

本来の税額控除は、「(寄付金-2千円)×10%」に過ぎなかったが、
ふるさと納税では、2千円だけを除いて、
寄附金の「全額」を控除できる仕組みを作ったのだ。

とは言っても、寄附金控除が無限に適用されるワケではない。
控除の「上限額」というものがあるので、
この「上限額」をキチンと押さえることが、とっても大事。

このあたり、説明と計算がややこしいので、
以下に「上限額」を記載しておくにとどめる。

要は、この金額までなら、2千円ポッキリの負担で、
各地の「御礼の品」を好きなだけゲットできるということ。

なお、所得税の「課税所得額」と住民税の「所得割額」という2つの要素によって、
各人の「上限額」が変動するので、この2つをキッチリ把握する必要がある。

課税所得額    寄附金控除「上限額」(下記+2千円)
~195万円   所得割額×23.558%    
~330万円   所得割額×25.065%
~695万円   所得割額×28.743%
~900万円   所得割額×30.067%
~1800万円  所得割額×35.519%
~4000万円  所得割額×40.683%
4000万円~  所得割額×45.397%

御覧のとおり、どう見ても「富裕層優遇」の制度なんだよねえ。

例えば、所得税の課税所得が1億円の人の場合。
住民税は一律10%だから、住民税の所得割額は1000万円だ。
となると、ふるさと納税の「上限額」は、
なんと、454万円(!)。

つまり、454万円までは、好きなだけ「御礼の品」がゲットできることになる。
通常は、「御礼の品」=「寄附金の半額」だろうから、
この人は、ふるさと納税によって、年間227万円相当の贈答品をゲットできる。
しかも、2千円ポッキリで。

まあ、課税所得1億円のうち、半分の5千万円を納税しているんだから、
それくらいの恩恵があってもいいんだろうけどね。

規模は違えど、私も、シッカリと「上限額」ギリギリの「納税」をした次第。

だけど、自営業の場合、ホントは、
確定申告の時期にならないと、自分の課税所得額は分からないんだよね。

前年度よりも、所得が大幅に落ち込むと、ふるさと納税でも大損をしてしまうワケ。

このあたりの、ちょっとした「スリル感」も、楽しむしかないっすね。