沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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177)怒りを笑顔に!

先週の土曜日(3月14日)、三重弁護士協同組合主催のセミナーが開催され、多数の組合員が受講した。
セミナーのタイトルは「怒りを笑顔に変える!クレーム対応講座」というもの。
講師は、一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事で、「怒りを笑いに変えるクレーム・コンサルタント」なる肩書を持つ谷厚志氏。

この方、関西を拠点に活躍していた元お笑いタレントで、芸能界引退後、リクルート社の「お客様相談室」に配属された際に2000本以上のクレーム対応を経験されたという方。

元お笑いタレントだけに話術はピカイチ。
加えて、クレーム対応の実績もズバ抜けているから、何と言っても、話の内容に説得力がある。
ということで、評判が評判を呼び、今では、年間200~250本の講演を全国各地で毎年展開しているのだそうだ。

まさに、「クレーム・コンサルタント」が天職といった感じ。

実は、私は、谷氏のセミナーを受講するのは2回目。
以前、四日市商工会議所で谷氏のセミナーが開催され、自らの頭の整理にも役立つと思って気軽に受講したのだが、その面白さと有用度は、当初の期待を遥かに超える素晴らしいものであった。

そこで、今回、三重弁護士協同組合のセミナーに、是非とも谷氏をお呼びすることを推薦し、企画が実現した次第。

さて、肝心の中味であるが、その骨子としては、次の2点。

1)クレームは、顧客からの「アドバイス」と心得る。
2)クレーム対応の「3ステップ」をマスターする。

クレームという言葉は、日本では「面倒な苦情」とか「理不尽な言い掛かり」といったネガティブなイメージで共有されているが、英語の「claim」には、単に「要求する」という意味しかない。
つまり、顧客は、単に「期待と現実のギャップを埋めて欲しい」と要求しているに過ぎないのである。

そこで、企業側が、適切なクレーム対応を実施すれば、その商品価値はグンと向上し、より顧客満足度もアップし、そのクレーム客が「熱烈なファン」に変貌するかも知れないのだ。

ある調査によれば、商品購入直後に、商品に「不満」を抱く顧客は、平均して40%にも及ぶそうだ。
まあ、顧客の抱く当初の「期待」がバラバラなんで、これは仕方がないのかも。
そして、商品に「不満」を抱いた顧客のうち、実際にクレームを発する顧客は、その4%に過ぎないのだそうだ。

つまり、企業が把握するクレーム客というのは、顧客全体の2%未満に過ぎないので、企業としては、ついつい、「クレーム客=特異な感性の人達」と思いがちなのだ。
ところが、クレームを漫然と放置することは、その背後にいる25倍もの顧客のクレームをも無視してしまうことになり、ひいては、顧客全体の40%を失うという深刻な結果を招きかねないということ。

即ち、クレームは、商品価値の向上と顧客拡大のための貴重な「アドバイス」というワケだ。

谷氏は、以前は「経営コンサルタント」の肩書も名乗っていたそうだが、儲かっている企業の共通項は「クレームを大切にしている」ことだと気づき、自身の得意分野である「クレーム対応」に特化することこそが、企業の収益向上に繋がるとの信念で、現在の肩書に改めたのだとか。

まさに、納得!である。

ところで、谷氏の説くクレーム対応の「3ステップ」とは次のようなもの。

1)限定的にお詫びし、話を聴く姿勢を見せる。
2)共感しながら話を聴く。
3)全て話を聴いてから、解決策を提示する。

これらは、全てウンウンと頷けるもの。

私自身も、何度かクレーム対応をテーマにしたセミナー講師を担当したことがあり、その際には、次の3ステップを推奨していた。
これは、私の経験に基づき、私なりに整理したアプローチ法である。

1)心情的アプローチ(話を聴いて共感)
2)客観的アプローチ(証拠による事実確認)
3)理論的アプローチ(理屈による解決提案)

谷氏の整理の仕方とは異なるものの、「話を聴いて共感」というキーワードはズバリ一致する。
つまり、これこそがクレーム対応の中心ということだ。

当事務所は、損害保険会社の顧問を務める関係上、交通事故の被害者との交渉は日常的業務の1つである。
弁護士に仕事が回ってくるということ自体、保険会社の交渉担当者の手には負えないくらい、トラブルが相当に深刻化している状況であることを示している。

ところがである。
中には、弁護士が丁寧に話をお聴きするだけで、実にスムーズに解決まで一気に漕ぎ着けられるというケースもある。
これは、結局のところ、保険会社の交渉担当者が、「話を聴いて共感」という大事なプロセスを踏まず、一足飛びに「解決策を提案」してしまったことが原因なのである。

まあ、膨大な交渉案件を担当し、毎回毎回、同じような話ばかりを聴き続ける保険会社の交渉担当者としては、ついつい、話を聴くということ自体を面倒に感じてしまうことは、十分理解できるけどね。
それでも、この共感プロセスをすっ飛ばしてしまうと、結局、クレーム対応に余計な時間を費やしてしまうことになるんだよね。

ところで、この日はホワイト・デー。
バレンタインに妻と娘達からプレゼントを貰いながらも、全くお返しをしていなかった私。

これはクレームになるかも!と思っていたら、何と、「ホワイト・デーにお返しをくれなかったから、夫の首をネクタイで絞めた!」という訳の分からないニュースがリビングのテレビで流れ始めたではないか!
そこへ妻が、タイミング悪くリビングに入ってきたもんだから、私は、すかさず「ご、ごめん……。何でも好きなモンをどうぞ。」と「お詫び」と「提案」をしたのであった。

妻は、ケタケタ笑うばかりで、何とか我が家の一大事は回避された。

まあ、そもそも、妻は、ホワイト・デーのお返しを何ら「期待」してもいなくて、「期待と現実のギャップ」が無かったのかも知れないが、ひょっとすると、不満を抱えながらも声を発しない「サイレント・クレーマー」だった可能性もあるよねえ。

う~む。妻の「笑顔」に隠された本音や、いかに……。